湿気の多い日が続き、気分があまり上向きにならない時期だけど
闇を幻想的に演出してくれる蛍の光が見られるのはこの時期だけだ。
幼かった頃、祖母の家に毎年のように蛍を見に行っていた。
夜外に出られるというワクワク感と
蛍が飛び交う不思議な光景。
祖母をみると、蛍は見飽きてるのか、
その光よりも、孫達が小躍りしながらはしゃいでる姿を嬉しそうに見ていた気がする。
昔を振り返れば、一つの光景、情景でも自分自身の世代毎にいろんな思い出がある。
例えば、同じ「海」でもいろんなシチュエーションの思い出が蘇ってくる。
でも、私にとって、蛍が飛び交う光景の思い出は、
その祖母との思い出とあと、もう一つだけ。
今はもう時間的余裕がなくなってやめてしまったが、
開業以来数年前まである場所へ、コーヒー用の天然水を汲みに行っていた。
雨が降っても雪が降っても、行くと決めた日には片道小一時間かかる道のりに車を走らせていた。
その道中が、一日のうち唯一自分の時間と言えたのでそのドライブは嫌なものではなかった。
そして、一年のうちで最も好きな時期の水汲み道中が、その蛍の時期だった。
夜、綺麗な水を求め山の中を走るので、当然と言えるほどそこには沢山の蛍が飛んでいた。
夜空一杯に飛ぶ蛍の光。
その中を車で走ると、まるで光のトンネルの中を走ってるような感覚。
傍らの木にとまる蛍は、その木をまるでクリスマスツリーのように光であぶり出す。
さすがにその様は、心を揺さぶった。
本当に贅沢な瞬間。
年によって蛍の発生数は変わる上、
時間がちょっとずれるとなかなか最高の瞬間には巡り会えないけど、
あの光景が頭から離れることはないだろうな。
絶対、絶対忘れない。